令和8年度 「生活の中の御詠歌」
『生活の中の御詠歌』
惠良真由美
私は日々家族、友人、知人、お檀家さま、地域の皆様など、多くの方々との「つながり」の中で生活をしています。しかしこれまで、その多くの方々を「病」によって亡くしお別れをしてまいりました。
このように、深い悲しみや苦しみに直面した時、お薬師様にお縋りし、お救い頂きたいと願います。静かに坐り、お姿に手を合わせますと、自然に心が落ち着いてまいります。
そして、じっとお顔を見つめてまいりますと、ある日は優しく微笑み、またある日は悲しみを湛えたお顔のように感じられます。それはお薬師様のお姿が変わるのではなく私自身の心の在り方がそのまま映し出されているのだと気づかされます。人は自身の心の持ちよう、考え方で幸にも不幸にもなり得る、そのことを静かに教えていただいているのだと思い至ります。
「右手は施無畏の印を挙げ、左手に薬壺…」
『薬師如来御和讃』の一節にあるように、右手は恐れや不安を取り除き、安心と平穏を与え、左手の薬壺は人々の苦しみを癒す象徴であります。そのお姿は常に私たちに寄り添い、見守ってくださるお慈悲そのものです。
また、お薬師様は庶民信仰の色濃い身近な仏さまであり、『薬師如来御和讃』も詩・曲ともに親しみを覚える御詠歌です。日々口ずさむ中でふと我に返り、自らを見つめ直す機縁をいただいております。
このように私たちの心と身体に深く染み入る有難い曲をお作りくださった故豊岳明秀師、小笠原照道師両先生には厚く感謝申し上げます。私にとって、一日一日を平穏に暮らしていくための支えであります。これからも大切にお唱えし、日々の生活の中で仏の教えを深めてまいりたいと思います。