法話の窓

066 仏教を学ぼう

魚は水中にありて水をしらず

  人は妙法にありて妙法をしらず
                  ... 夢窓国師 ...

 京都の天竜寺開山である夢窓国師は、「魚が水の有り難さを知らないように、人々もお釈迦さまの説かれた仏法(妙法)を知らない。」と嘆かれています。

 仏法の「仏」の語源の意味は、「目覚めた人」ですから、言い換えれば「仏」とは、<この世の法則に気付いた人>です。そうしますと「仏法」とは、<この世の法則にのっとった理にかなった生き方>ということになります。

 物理的法則で考察するならば、時速100kmで走る車が、異変に気付いて急停止するまでには、約100mの距離が必要だと言われていますから、高速道路で車を運転する場合は、約100mの車間距離を保って走るのが、理にかなった生き方です。なかなか理論通りにはいきませんが、実際に高速道路を運転してみると、10m、20mの車間距離で走っている車が多いのには驚きます。高速道路では、何台もの車が一度に衝突する多重事故が発生しますが、これは偶然ではなく必然なのです。また、一般道を運転していますと、車間距離はさらに短くなって、5m程で走っている車を見かけます。交通事故を起こした人の例をみると、スピードの出し過ぎや無理な追越など、やはり理にかなっていないのが原因です。現代でも夢窓国師の言われる通り、妙法を知らない人が多いのではないでしょうか。

 実は最近、自らの不注意から交通事故で亡くなった青年の葬儀に出席したのです。弱冠20歳の若者でした。ご親族のすすり泣きは止まず、同窓生らしき人たちは、目を赤くはらして見送りました。やりたいことがいっぱいあっただろうに、人生これからという時に、尊いいのちを失ってしまうなんて・・・・。

 こんなにも悲しい事件には、巡り会いたくありません。しかし、休日があれば若者が暴走し、死傷者が出ています。どうか、自ら不幸を作り出すような愚かな行為は避けてください。交通事故だけではなく、人生全般にわたって、<理にかなった生き方>なのかどうかを考えてみて下さい。一度だけの人生です。「お釈迦さまの教え(仏法)を学んで良かった」と言える人生を歩んでいただきたいのです。人類に残された心の世界遺産、仏教を知らないのではもったいない。できれば、身近なお寺の門をくぐって、和尚さんに親しく話し掛けてみて下さい。人生の転機が訪れるかもしれません。

飯沼宗秀

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