法話の窓

038 呼吸

 緊張したときは、「深呼吸をしなさい」とよく言われます。単なるおまじないだと思いがちですが、それには理由があるのです。

 『四十二章経(しじゅうにしょうきょう)』というお経のなかで「人の命は呼吸のうちにあり」と教えています。生きているということは、呼吸そのものであるといえます。息をはいて吸う一呼吸が、生(せい)の最小単位であると考えることができるからです。

 それを、「大切にゆっくりと」一回一回積み重ねて、寿命となります。そう考えると、呼吸一つおろそかにすることはできません。一生を通じておろそかにしてしまうことになりかねないからです。「一瞬一瞬を大切に!」という言葉には、そんな意味合いがこめられているのでしょう。

 それほど大切な呼吸なのに、私たちはあまり意識しないで生活しています。

 ところが、呼吸が速いとロクなことがありません。ちょっとしたことにカッとなって、好きな友だちに言わなくてもいいことを言ってしまったりした経験はありませんか?
 そんなときは自分を見失っているのです。

 ゆっくりと呼吸をすることによって、脳内のセロトニン神経というものが活性化することは医学的にも証明されています。

 セロトニン神経が刺激されると、リラックスした状態になり、心と身体に良い影響をおよぼすのです。坐禅をすると、ゆったりとして、スカッとした気持ちになるのはそのおかげです。

 お寺で坐禅とまではいかなくても、気がついたときに、ゆっくりの呼吸を10回ほど繰り返すだけでもずいぶんと気持ち良くなるものです。コツは、出る息吸う息のときに、楽しいイメージに意識を集中させます。たとえば、心の中で「落ち着け」とか「気持ち良い」ととなえるととても効果的です。私はこれを、短時間に落ち着いた自分を取り戻す「自分坐禅」と呼んでいます。

 息のながいのが長生きだといいます。命と直結している「呼吸」を大切に考えてみることで、今までとは違った生活になるのではないでしょうか。思い出したときには、ゆっくりと呼吸をして、毎日を充実したものに変えていきたいものですね。

武久寛海

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