法話の窓

【法悦】達磨さま(2011/10)

 徐緩  ー ゆっくりと 落ちついて 慌てるな ー   達磨大師三種安心の法門より


 十月五日は達磨大師のご供養日であります。達磨大師は禅宗のお祖師さまで、お釈迦さまの教え、仏心宗(禅宗)を初めて印度より中国に伝えられました。(六世紀の初期)
 菩提達磨圓覚大師と尊崇をされております。達磨大師は、仏心の生活を解り易く『徐緩(じょかん)』と説いておられます。
 私たちの最近の生活は、ともすれば仕事に追われ、何事につけても忙しく、セカセカ・イライラしております。日頃口にする「忙しい」と云う言葉は、心偏(りっしんべん)に亡と書きます。心が亡んでいる状態です。心の上に亡を書くと「忘」と云う字になります。人間が人間らしい心を忘れている状態です。現代人の心の状態を表現しております。
 達磨大師の「ゆっくりと おちついて 慌てるな」の教えは現代人への警鐘であります。大師によって齎(もた)られた禅定は心を安らかに癒す処方箋であります。

 坐禅は安楽の法門であります。静かに坐って、身と呼吸と心を調えることです。イライラ・セカセカした乱れた心の波長は次第に治まり、人間本来の清明な平常心が甦ってくる、この平常心に覚めることです。
 『脚下照顧』禅はまず自己をみつめる、自己の確立を出発点としております。自からを内観し、坐禅の調える力によって、自我の際限のない欲望、本能的・衝動的な行動を制御することが出来る、自己を常に調えることが、心を安らかにする方途であり、よく調えられた自己こそ、真実おのれのよるべであります。達磨大師が「徐緩」と言われる心の安らぎであります。
 情報過多の不透明な時代、ゆっくりと おちついて 慌てず 時代を見極め、しっかりした足どりで、自己の人生の目標に向って歩め、と達磨大師は教えておられます。


 花びらと色と香を             そこなわず
 ただ蜜味(みつ)のみを携(たずさ)へて  かの蜂のとび去る如く
 人々の住む村々に             かく牟尼尊(ひじり)は歩めかし    法句経

尾関義昭

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