法話の窓

【法悦】施餓鬼会(せがきえ)(2011/07)

  布施とは貪(むさぼ)らざること
   知足は富貴 施しは利生(りしょう)の處(ところ)なり


 お釈迦さまの十大弟子の一人阿難尊者(あなんそんじゃ)が、或る日お釈迦さまのご説法を聞き、独り静かな樹蔭に坐し、聴聞したみ教えを想念して、夜は更け、三更になりました。
 突然、口から火炎を吐く恐ろしい1人の餓鬼が現れ阿難尊者に、「貴方は三日後命が終り、我等と同じく餓鬼道に堕せん」と告げました。尊者は驚き恐怖して「貴方は私の命期を知り、未来に餓鬼に生まれることを知っている。どうしたらこの苦しみからのがれることが出来るか、その方法を教えていただきたい」と尋ねました。
 すると焔口(えんく)餓鬼は「汝、もし、明日無量無数の餓鬼とすべての人々に飲食を施し、我が為に三宝を供養せば、貴方は増寿し、私もこの餓鬼の苦しみから免れ、天に生ぜん」と申しました。
 尊者は急ぎこの事をお釈迦さまに申し上げ、教えを乞いました。
 お釈迦さまは尊者の心をくみ取り、「大慈悲心を起こして三界のすべての餓鬼に浄き飲食を施し、その法要の功徳力によって、すべての苦患に苦しむ人々を救いなさい。この布施行を修すれば無量の福徳が具わり、増寿し善根を具足し、如何なる悪魔も害することができない」と教えられました。
 尊者はお釈迦さまの教えに従い、施餓鬼大法会を厳修し、生涯布施行に徹し、正覚を行ずることが出来ました。

 この物語のお釈迦さまは、一切衆生を慈しむ仏さまの大悲心であります。阿難尊者は救いを求める求道の心であり、餓鬼は貪瞋痴の三毒に苦しむ迷いの心です。
 寺院に於ける施餓鬼供養会はこのお釈迦さまの教えに従って厳修されております。


  三毒の鬼火を消して   心静かに 穏やかに
  日々の営み 汗流す   知足と感謝の歓びに
  自利と利他 平等利益して
  和願愛語の花咲きて   寂光浄土 楽しけれ

尾関義昭

ページの先頭へ