法話の窓

095 「いただきます」「ごちそうさま」

 今日は、食事のときのことば「いただきます」「ごちそうさま」について考えてみましょう。皆さんはご飯を食べる前に「いただきます」。そして、ご飯を食べ終わったら「ごちそうさま」と言って手を合わせていますか?

 昔の日本の家庭では、必ず食前の「いただきます」と食後の「ごちそうさま」を手を合わせて言っていました。小さい子どものときから教えられた食事のマナーのひとつです。この頃は、手を合わせて祈るということに仏教くささや、照れくさいこともあってか「いただきます」「ごちそうさま」をしない人が多くなりました。また、学校での食事のときも、宗教行事と思ってこれを禁止する先生がいるそうです。でもそれは間違いです。

 では、食事のときはまず、何に向って手を合わせるのでしょうか。神さまや仏さまに祈るのこととは違います。昔からの日本人は、植物や動物などのいのちを、自分と同格のいのちと感じて大切にしてきたのです。だから、これから食事をするときには、これから食べようとする米や麦、野菜や魚や肉などのいのちに向って手を合わせるのです。

 いのちを頂くのですから、①「あなたのいのちを頂ますよ」と感謝し、②「そのいのちにお返しができるかしら?」と反省をし、③「どうか成仏して下さいね」と祈りをこめて「いただきます」「ごちそうさま」といって手を合わせます。つまり、これから食べられようとするもののいのちに向って、感謝と反省と祈りをこめて手を合わせているのです。 この優しい心持ちは、すべてのいのちを大切に考える日本人の生命観であり世界観なのです。この心持ちを忘れないでいるならば、食べ物に不満を言ったり、嫌いだと言って捨てたりはできないはずです。生きとし生けるもののいのちを大切にする心からは、真の平和が生まれてくるはずです。

 みなさんも食事の前には「いただきます」と手を合わせ、食べ終わったら「ごちそうさま」と手を合わせましょう。こうした習慣から、必ずや日本の人々が平和になり、幸せな社会作りにつながることだと思います。

横田宗忠

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