法話の窓

092 ハトとミミズ

 いつの間にか夜の虫の声がにぎやかな季節になりました。その声を聞いていたら、新聞に載っていたこんな投書を思い出しました。9歳の小学生が書きました。

 

《一寸の虫にも五分のたましい》

 

 このごろ、まどをあけたら、虫がよく入ってきます。ぼくの母さんは虫が大きらいです。虫を見つけたら、「キャー、虫」って言って、いそいでティッシュをとりにいって、ティッシュで虫をつかんで、グチッとおさえて、ごみばこにすてます。ぼくはすごくいやな気持ちになります。かわいそうだからです。

 きょねん、母さんが買ってくれたドラエモンのことわざ辞典に、「いっすんの虫にも五分(ごぶ)のたましい」って書いてました。どんなちいさい生き物にも、いのちがあるのに、母さんはかわいそうなことをするなと思います。

 母さんがゆうはんのよういをしてる時、ぼくは小さい小さい虫を発見しました。母さんにみつからないように、ティッシュでそっとつつんで、まどをあけてにがしてやりました。心の中で、元気でがんばれよと思いました。...

今度は私自身が体験した事です。

 

 以前あるとき、私が住んでいるお寺の庭の木の下でハトが死んでいたのです。血相変えて知らせにきた娘と一緒に穴を掘って、穴の中に遺骸を埋めました。次に、火のついたお線香をたてて、鐘を鳴らしながらお経を唱えました。娘も、目を閉じて両手を合わせて合掌をし、わかる所は一緒にお経をとなえていました。簡単なお葬式が終わったあと、娘がポツリとこんなことをいったのです。

「猫やハトはお葬式をしてもらえるのに、どうしてミミズやゴキブリはお葬式してもらえないのかなぁ?お父さん、どうして?」・・・答えに詰まってしまいました。確かに猫やハトにはお墓を作ってお経をとなえた事は何度もありますが、ミミズやゴキブリのお葬式はした事がありません。

 お寺ではお葬式や法事をしてもらえない『虫のたましい』などのために、「おせがき法要」をいとなみます。でもだからといって、それがミミズのお葬式をしない答えになるでしょうか。少なくとも7・8才の子供を納得させることができるのか疑問です。

 どちらも、とうといハトの命であり、ミミズの命です。なのに一方はお葬式をし、もう一方はしない。どうしてなのか?子供達もどうか一緒に考えて欲しい。

豊岳澄明

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