法話の窓

091 お坊さんのお仕事は?

 ある日、近くの小学2年生5人が「町内探検」と言って私のお寺にやってきました。本堂の玄関で出迎えた私に、横一列に並んで元気よく「よろしくお願いします」とあいさつしてくれました。肩から左右に、バインダーと水筒をたすきがけにさげています。

 

 お寺の中を案内して説明しました。そのあと一休みしましたら、今度はバインダーを肩からはずして、メモを取りながらの質問です。あらかじめ、グループで内容を相談していたのでしょう。男の子が代表して「お坊さんのお仕事は何ですか」と一気にたずねてきましたので、びっくりしてしまいました。少しのあいだ、思いをめぐらして、つぎのように答えました。

 

 「一にお経を唱えること。二にお掃除すること。三に坐禅をすることの三つです。」

 

 禅宗(禅の教え)のお坊さんのつとめは、むかしから、「一 看経(かんきん)、二 掃除、三 坐禅」と言われてきました。(看経とはお経を唱えることです。)

 

 2年生のみなさんに質問されて、あらためてこのことの意味を考えさせられました。

 ひとつめはお経を唱えること。朝、起きたらまずおつとめをします。みんなの幸せや亡くなられた方の幸せを祈ります。ご法事やお葬式の基本もお経です。またお経には、私たちの生き方の道しるべが書かれてありますから、心をこめてお唱えすることが大切なのです。

 二つめはお掃除です。お掃除はただまわりをきれいにすることだけではありません。お掃除を通して、私たちひとりひとりの心をすがすがしくしていくことなのです。

 三つめは坐禅です。静かに坐って、自分自身を見つめることです。ひたすら坐っているだけで、心の奥深いところから、生きる喜びがわいてくるから不思議です。

 

 お坊さんのお仕事の基本はこの三つですが、みなさんの場合、一は勉強やスポーツを一生懸命していくこと。二は整理整頓(せいとん)を通して、心も美しくしていくこと。三はいつでも心を静かに大らかにもつこと、と言えるのではないでしょうか。

新野建臣

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