法話の窓

089 お世話になりました

 今年もツバメが飛来し、ヒナを育てている。例年のごとく無事に成長して巣立ちできることを願いつつ見守っていた。
 ある朝、二羽のツバメが地上にて同じ方向を向いて必死に鳴いているので、目を向けると自分では飛ぶことが不可能なヒナが一羽、じっとして親鳥の方を見ていた。
 巣に目をやると、心配そうに三羽のヒナが下の方を見ている。何らかの事情で、一羽落下したようだ。
 そっと近づくと、ヒナは小さい翼をパタパタさせて移動をはじめる。親鳥もヒナの方に目を向けて鳴いている。
 どうしたものか。しばらく様子を観ていたところ、ヒナはじっとして頭だけを左右にふり、不安さが伝わってくる。
 曇り空から雨が降ってきた、、、、、、。伝え聞いたことだが「親鳥は、人の手が触れたヒナの子育てを放棄する」を思い出した。が、そんなことは言っていられない。ヒナを巣に戻そうと家内と話し、ヒナを家内が両手で持っているタオルの上に乗せ保護をしている間に、約5メートルの高さの巣の下に軽トラを寄せ、荷台から二段ハシゴをかけ、ヒナを巣に戻すことができた。

 雨でぬれたところをふきながら、巣を見上げると、何事もなかったかのように、下を眺めているヒナたち。
 親鳥は、一部始終見ていたのか、低空飛行で目の前を通過し、落下したヒナにエサを与える姿を見て、子育て放棄をしないことを確認でき一安心した。
 いただいた命を落下により失うことなく、無事巣立ちをしたヒナが、親鳥の後を追いながら、横目もふらず、ひとつのことに集中し、大空、前庭、巣の近くを自由自在に飛行し、一日一日を生きている。
 たいせつな命をツバメのヒナは一生懸活かしていると思いきや、5~6羽のツバメが正面玄関より飛び入り、まもなく集団で庭へ出て行ったので戸を閉めようとしたら、入り口近くの肩額のうしろでガサガサしている音が耳に入り、のぞいてみると、口バシの黄いツバメだった。
 もしかしたら落下したヒナかな?と思った。手のひらでしばらくじっとして飛び立ち家族が待っている電線に止まり、状況説明をしているようにみえた。
 いただいた尊い命をどう活かすかを、指導してもらう時期が必要であることを、ツバメのヒナに教えられた思いがする。
 やんちゃなツバメ君、生き方を両親に教えてもらい、成長して来年も寺で子育てをしてくれることを願っているョ!!。

鷲津義芳

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