法話の窓

083 おじいさん・おばあさんとのくらし

 皆さんの家にはおじいさんやおばあさんがいますか?。最近では「かく家族」といって、おじいさんやおばあさんといっしょに暮らしていない家がとても多いのです。

 和尚さんの家族はおじいさんとおばあさんと和尚さんと奥さんと子供四人で合計八人の家族でした。でも四年前にはおじいさんがなくなり、子どもたちもしゅうしょくや結婚で家をはなれ一年前には三人にまでへりさみしくなりました。しかし長男がお嫁さんを迎え子どもが生れ、次男も修行を終えて帰り、今では家族が七人にふえふたたびにぎやかになりました。家族も月日とともに移りかわっていくんですね。

 

 愛知県社会福祉協議会賞を受賞した愛知県蒲郡市(がまごうりし)に住む中学三年生の稲石みなみさんは作文に家族についての思いを綴られています。みなみさんは小さな頃にはおじいさんやおばあさんに素直に挨拶ができたし、自分のことをよく話して聞いてもらっていたのに、大きくなるにつれておじいさんやおばあさんのことがあまり好きではなくなりました。それは耳が遠くなっている二人に話しかけてもうまく伝わらなかったり、何度も同じ事をいわれたりするといやになってしまうようになったからでした。

 ところが、みなみさんはおばあさんが日頃からお風呂の掃除など、家の仕事をたくさんやってくれていたのに気が付きませんでした。
ある日おばあさんがケガで入院し、その仕事をみなみさんがかわりにやってみて初めてその大変さが分かったのです。『家に帰ったらおじいさんやおばあさんがいる。それがあたりまえになっていて、そのことの大切さを忘れていました。自分にとっていてくれなくてはならない人だと知りました。私の言葉が伝わらなかったのは早口だったからで、ゆっくりていねいに大きな声で話せば一回で聞きとってもらえます。そして言葉を整理して分かりやすく伝えれば、何回も聞き返されることがなくなります。ちょっとした思いやりのある行動でお互いにいやな気分にならなくてもすみます。おじいさんやおばあさんとあと何年いっしょに過ごせるか分からないけれど、少しでも優しい気持ちで接していきたいと思いました』。それ以来みなみさんは、おじいさんやおばあさんといっしょにいる生活を大切にしたいと思うようになったそうです。

 そして、最後に『おじいさんやおばあさんがいなければ、わたしは存在していません。高れい者の方たちが今までの社会をきずいてくれました。それを私たちが受けついで発展させていかなければなりません。だれでも年をとると思うように体を動かせなくなったり、できなくなることがふえてくると思います。私たち若い人が自分とくらべてできないことばかりを見るのではなく、ちょっとした思いやりでカバーしてあげれば高れい者の方たちも過ごしやすくなると思います。お互いに相手の立場が考えられる優しい国、優しい社会になってほしいと思います』と結んでいます。

 

 こういうお話はどこの家庭にもあるものですね。家族の中では一人一人それぞれ役割りがあり、ささえあいゆずりあって暮らしているのです。それは学校でも会社でも同じです。おたがいの立場に立ち、思いやりをもち大切にしあってゆくことがすべての基本ですね。

木村文達

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