法話の窓

070 星たちのきらめき

 早いものでもう11月。寒さも日ごとに強まって、冬が駆け足でやってきます。夜になるとさらに気温が下がるので、暖かい部屋の中で過ごしたくなりますが、思い切って外に出て空を見上げると、星たちが競うように輝いているのに驚かされることでしょう。

 午後9時頃に東の空に目をやると、「三つ星」をトレードマークにしているオリオン座が雄大な姿で昇ってくるのが見えます。そこから少しだけ右上のほうに目を移すと、清少納言もその素晴らしさを讃えた「すばる」の、きめ細かな輝きに目を奪われます。そのきらめきは、「空の宝石箱」と表現されるほど素晴らしいものです。その他にも、おおいぬ座でまぶしく光るシリウスや、ふたご座が仲良く空に浮かんでいる姿、三つの明るい星によって大空に描かれる「冬の大三角」など、雄大な光景が空全体を覆っているさまに圧倒されそうになります。

 古来、星の輝きは世界中のあらゆる人たちを魅了し続けてきました。清少納言に限らず、世界中の芸術家たちがその素晴らしさを讃える言葉を残していますが、星空がすべての人々の心をとらえてやまないのは、いったい何故なのでしょう?

 それは、星たちがいつも変わることなく、静かに私たちを包んでくれているからではないでしょうか。世の中は絶えず移り変わり、今日から明日へ、今月から来月へ、今年から来年へと、同じところに止まることなく形を変えていきます。それに対して、星たちは毎年同じ姿で、大空できらめきながら私たちを見守り続けてくれているのです。その「大いなるもの」に抱かれる安心感を得るために、人々は星空を見上げるのでしょう。

 お釈迦さまは、人間が苦しんだり悩んだりするのは何故かという難しい問題を解決するため、長い間厳しい修行に励んでいましたが、ある夜、星が輝いているのを見た瞬間に体も心も楽になり、その問題の解答を見つけることができたと言われています。

 さあ、皆さんも広大な星空を見上げて、その輝きの中に心身を委ねてみませんか?

 

朝山一玄

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