法話の窓

042 命の糸

 みなさん、夏休みはどうでした。遊びに、スポーツにとそれぞれ楽しんだことでしょうね。和尚さんが子どもの頃も、毎日のように山に行って虫を追いかけたり、川に入って遊んでいましたよ。

 そう、みなさんも山や川で遊びましたか。いろいろな生き物がいたでしょう。どのような生き物を見つけましたか。実はね、みんなが目にしたいろいろな動物、植物、鳥、虫などのすべての生物は、目に見えない「命の糸」で結ばれているのですよ。

 

 じゃあ、ここで生物のつながりに気づくゲームをやりましょう。みなさんに、野山で目についた植物や生き物の名前を書いたカードを持ってもらいますね。

 A君、君はクルミの木を見たと言っていましたね。じゃあ「クルミの木」のカードを持ってください。

 B君は何を見つけましたか。

「テントウムシを見ました」

 じゃあ、B君は「テントウムシ」のカードを持っていてくださいね。

 ここで、みなさんに質問しますよ。テントウムシは、何を食べて生きていますか。

 テントウムシはね、農作物の汁液を吸って生きているアブラムシなども食べるのですよ。

 C君は「アブラムシ」のカードを持ってもらいますね。

 今、クルミの木とテントウムシとアブラムシは、つながりがあることがわかりましたね。つながりのある生物同士が、毛糸の一端を持ってピンとはるように持ってください。

 では、続けますね。テントウムシは何に食べられるでしょうか、考えてみましょう。

 そう、クモが食べますよね。D君が「クモ」のカードを持っていましたから、B君とD君はつながりがありますね、毛糸をお互いに持っていてくださいよ。

 こうしてつながりを考えていくと、この「クモの巣」の網の目は細かくなっていきますね。F君が「カエル」のカードを持っていますが、D君が持つ「クモ」を食べますし、カエルはG君が見た「ヘビ」に食べられてしまいます。でも、ヘビはH君が持っているカードにあるワシなどの大きな「鳥」に狙われています。そして、これら動植物が死んでしまうとどうなるでしょうか。そう、土の上で腐ってしまいます。でも、土のなかのミミズがこれらを分解して土を肥やし、次の生物をはぐくむ土壌をつくりあげます。ちょっと残酷な話に聞こえるかもしれませんが、和尚さんもみんなも、野菜や肉などのいろいろな命を食べているから、生きていけるのですよ。

 さあ、みなさんが野山で見かけた生物になってもらい、そのつながりを毛糸で結びましたね。じゃあD君に毛糸を引っ張るか、はじいてみてもらいます。手ごたえを感じた人は手をあげてください。D君が毛糸に衝撃を与えて手ごたえを感じた人は、つまりD君は「クモ」のカードを持っていますが、お互いの存在が大切なことがわかりますよね。

 今度は、つながっている毛糸のどこか一箇所をはさみで切りますよ。たるんだ毛糸を持っている人は、その毛糸をはなしてください。そうすると、最後には全員が毛糸を手放してしまいましたね。この毛糸の一本一本がとても大切で、たとえ一本でも欠けると自然のバランスがこわれてしまうということです。この毛糸のつながりを、「生態系」(エコシステム)といいます。

 じゃあ、最後の質問です。今、はさみで毛糸を切りましたが、この生態系の毛糸を切る行為をしている生き物はなんでしょうか。実は、われわれ人間なのですよ。

 

 お釈迦様は、このつながりの大切さをこのようにお話になっています。

 「網の目が、互いにつながりあって網を作っているように、すべてのものは、つながりあってできている。網の目は、ほかの網の目とかかわりあって、一つの網の目といわれる。網の目は、それぞれ、ほかの網が成り立つために、役立っている。」

 と、この命の不思議なつながりを説かれています。

 

 つまり、どんな生き物でも、自然界には無駄に生きているものがいないということですね。みなさんも、みなさんが野山で見かけた生物も、それぞれが役割を持っており、とても大切な存在、つまり「命の糸」で結ばれているのです。

高橋乾峰

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