法話の窓

034 「もったいない」の気持ち

 みなさんは「もったいない」という言葉を知ってますよね。物を粗末にしたり、無駄にするのが惜しいという意味です。この日本の言葉が世界で注目されようとしています。

 環境分野で初のノーベル平和賞を受賞したケニア副環境相、ワンガリ・マータイさんが国連本部で「世界的『もったいない』キャンペーンを展開したい」と演説したのです。ワンガリ・マータイさんは日本語の「もったいない」が物を大切にする気持ちに一番ぴったりする言葉で、他の国にはないすばらしい言葉であると語っているのです。

 仏教に「小欲知足」という教えがあります。欲ばらないで、少し足らなくても満足することを知りなさいという教えです。欲しいといった欲望ばかりでは、物を大切にするどころか、いつになっても本当に満足することはできません。「もったいない」の生活は「小欲知足」の教えの実践でもあるのです。

 しかし、日本の生ゴミの40%が食べ残しであるとも言われているように、私達日本人が「もったいない」の気持ちを忘れかけているのではないでしょうか。

 私が宿泊施設に勤めていた頃の出来事です。高校生が自然体験学習で宿泊し、近くの海でバケツ一杯に魚をつかまえ、施設の庭で料理をして食べていました。翌朝、引率の先生が「余った残りの魚は生ゴミで捨ててください」と言うのです。バケツを見ると料理したのは数匹で、残りは死んで腐りかけていました。私がどうしようかと悩んでいると泊まっていた別の家族が通りがかり、小さな女の子がバケツの魚を見て「可愛そう」とつぶやきました。先生は無駄につかまえて死んだ魚を生ゴミ扱いしたのに、女の子は魚の命の尊さを感じて「可愛そう」と言ったです。私も反省し、捨てるのではなく全員で土に魚をうめて手を合わせました。

 私達は多くの命をいただいて生かされています。そのことを忘れ、自分勝手に無駄の多い生活を続けると環境破壊もどんどん進み、将来、人類は大変な状況に追い込まれてしまうかもしれません。今こそ、昔から物や命を大切にして、無駄がない工夫をしてきた日本人が「もったいない」の言葉にふさわしい、本当に世界からも認められる生活を心がけたいものです。

森山隆司

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