法話の窓

025 どんな命「いのち」を大切に

 皆さんはカブトムシは好きですか?。

 

 おしょうさんは、子供のころカブトムシが大好きで、夏休みになると毎朝カブトムシを取りに行きました。カブトムシをとって家へもって帰り、虫かごの中でかっていました。毎日、さとう水やスイカをやるのですが、夏の終わりになるとだんだんと弱り、やがて死んでしまいます。自分の大好きなカブトムシですから、かわいそうに思い、土の中へうめて、おはかを作って手を合わせたことをおぼえてえています。

 皆さんもカブトムシにかぎらずこんなけいけんはないですか?。 

 それでは同じ虫でもゴキブリやハエやカは好きですか?。

 これらの虫が好きな人は少ないでしょうし、ゴキブリやハエやカをつかまえてかっている人はいないと思います。
 ゴキブリやハエを台所で見かけると、きたない感じがし、おいしい食事もだいなしになってしまいます。カは「プーン」とあの飛ぶ音を聞くだけで、さされてかゆくなったような気がします。ですから私たちはゴキブリホイホイやハエたたき、かとり線香といった道具で、すぐにたいじすることを考えます。
 それなのに、こんなにいやがられる虫達が、なぜこの世にいるのか考えた事がありますか?。

 私達にとって好きになれない虫たちが、なぜこの世にいるのでしょうか?。

 じつは私達人間には必要ではなく、好きになれない虫達でも、この世に生まれてきた以上、必ず何か役目があります。

 たとえばゴキブリやハエは、人が残したものや、虫の死がいを食べてそれを腐らせているのです。そうして腐った物は、土にもどっていくのです。つまりこの世の掃除屋さんです。そうして出来たその土に植物が芽をだしたり、花が咲いたりします。

 それではカは?。
 カも人間にとってやっかいな生き物というイメージがあるようです。しかし、人間の血を吸うカは全体の中のほんの一部で、メスが卵を生むために吸うだけです。じつは、カは自然の中で大切なやくわりをもっています。

 幼虫のボウフラは水中のゆうき物のぶんかいを手伝っています。通常、水中のゆうき物はバクテリアによって分解されることが多いのですが、その場合バクテリアのはいせつ物によって水は汚れてしまいます。また、バクテリアが増えすぎると水中の酸素がなくなり、生きものが住めなくなってしまうことがあるそうです。

 ボウフラはゆうき物だけでなくバクテリアも食べ、呼吸は空気中から行うのであまり水をよごしません。カは汚いドブや、下水こうの水をきれいにしてくれます。またカは植物の受粉も行います。

 そのほかにもたくさんの「いのち」があり、私たち人間のためにはならない「いのち」もあるでしょうが、この世のどこかで、なにかには必ず必要なのです。

 それなのに私たち人間は、人間の都合で(好きなもの)と(嫌いなもの)に分けて、好きな物の「いのち」は大事にして、嫌いな物の「いのち」は消してしまおうとするのです。
 しかし、その考えはまちがいです。「いのち」に好きも嫌いもありません。どんな「いのち」でも大切なのです。

 台所にゴキブリやハエがいたらせっかくの食事もだいなしです。夜寝るときに耳元でカがプウーンと飛んでいたら寝れませんので、殺すなとは言いませんがカやゴキブリやハエを殺してしまったときは、ごめんなさいと心の中で言える子になって下さい。そしてどんな小さな命でも、むやみに殺さないでください。すべてのいのちはこの世にとって大切ないのちですから。

高田慈雲

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