法話の窓

013 気持ちのおちつき

 先日テレビで、人体の不思議をあつかった、心臓の特集が放送されていました。

 「心臓」は、自分の意思とは関係なく動きつづけます。私たちが生まれてから死ぬまでの間、たとえ寝ていようと、起きていようと、何をしていようとおかまいなしで、最後の一打ちまで、私たちを生かそう生かそうと一度も休むことなく動き続けます。1分間に5~6リットル、1日に8,000リットルもの血液を送り出し、人の60兆の細胞に、酸素と栄養を届けてくれるのです。

 ドキンドキンと1日10万回、3年で1億回、60年にすると20億回以上動きつづけることになるのだそうです。まったく感心してしまいます。

 ところで、その心臓の鼓動ととても深い関係にあるのが「呼吸」です。興奮したり緊張したりしているときは、ドキドキして呼吸もはやく、気持ちも乱れています。

 気持ちが乱れると、何をしてもうまくいかないものです。そんなときは、姿勢を正してゆっくりと呼吸を繰り返します。これを「坐禅」といいます。普通はすわってやるものですが、イスにすわってでも、立ったままでも簡単にできるのです。そんなに難しいことではなく、姿勢と呼吸をととのえ、そしてこころをおちつかせることです。

 以前、たくさんの人の前ではなしをする機会がありました。そのとき、あんまり緊張していた私に、ある和尚さまが、「はなしをする3分くらいまえから、息をはくたびにこころの中で、『楽し~い!、楽し~い!』とつぶやいてごらん」と教えてくださいました。おかげでドキドキが少しおさまって、気持ちが楽になったのです。

 これは、立ったまま坐禅したのと同じです。それ以来、緊張しているときはゆっくり息をしながら「楽しい、楽しい」とつぶやいています。

 そこでアドバイス。みなさんも、テストや発表や、スポーツの試合などで緊張しているときは、「楽しーい、楽しーい」とか、「元気だせー、元気だせー」とやってみませんか。少しずつ効果が出てくるはずです。

 そしてときどきは、ゆっくり呼吸をして、心臓をはじめ、自分のからだにありがとうを言いましょう。

 

武久寛海

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