法話の窓

012 自分を見つめて 欲について

 私たち人間は、いろんな欲をもって生きています。たとえば買物に行ったとしましょう。さまざまなものを目にすると、ついあれも欲しい、あれも食べたいというように、つぎつぎと欲がわいてきます。

 今の世の中は、このような私たちの欲望を追い求めて、どんどん進歩していますが、自然破壊や地球の温暖化など、危険な状態も生まれてきました。

 その原因はどこにあるのでしょうか。人間の欲には限りがないのに、地球の資源には限りがある。そのバランスがくずれてしまった。これはつまり、私たちが昔の人よりずっと欲ばりになってしまったことにあるのではないでしょうか。

 おしゃかさまの説かれたお話に、こんな物語があります。

 ある山に、鳩の群れが住んでいました。鳩たちは山にある木の実を食べあきてしまい、もっとおいしいものを食べようと、町に飛んでいきました。すると立派なお城が見えてきました。そのお城の庭にはごちそうがたくさんありました。鳩たちはそれをめがけて急降下、むさぼるようにごちそうをたいらげます。それを見ていた番人は、「そうだ、この鳩をつかまえて王様にごちそうとして差し上げよう。そうすればごほうびをもらえるぞ」と悪知恵をこらして、ごちそうをばらまいて、網をはったのです。そうとも知らず、鳩たちはまた空から舞い降りてきました。一羽残らず網にかかった鳩たちは、カゴに閉じこめられました。そして毎日ごちそうが与えられます。その時、鳩のリーダーは「これはワナだよ。これを食べると太ってしまって、カゴのすき間から出られなくなるよ。今ならまだ間に合う、食べちゃいけないよ」と注意するのですが、だれも聞こうとはしません。しかたなく「そんなに欲ばったら大変ことになるよ、私は君たちの帰りを待っているよ」と言い残すと、カゴからすっと抜け出て、一人さびしく山に帰っていったというお話です。

 カゴの中の鳩たちは、一体どうなったのでしょうか。私たちの心の中には、限りのない欲を正しく調えていく、尊い心が秘められています。その心に気づくことが、おしゃかさまのみ教えです。みなさんも今一度自分の心の中をのぞいてみませんか。

上野浩道

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