法話の窓

011 あの日の子ねこ

 しばらく前の事ですが、生まれたばかりで目もあいていない2匹の子猫を、小学生の娘が学校帰りにひろってきました。
 浅い川の中に捨てられていたのを拾い上げて、抱いて帰ってきました。一生懸命世話をしていましたが、結局、目があく事もなく2匹とも死んでしまいました。
 そのときのことを娘が詩に書きましたので、ちょっと紹介させてもらいます。

 


詩:豊岳由華

「にゃーにゃー。」

学校から帰っていたら、何か川の方から声がする。

見ると、川の中にどろまみれになった小さな子ねこが二ひきでないていた。

これはいけない!とランドセルを道にほおって、川の中に下りた。

まだ目もあいていない。

このままだいて、学校に持っていっても、どうにもならないし。

どうしよう~。

ずうっと前にも、子ねこが川の中にいた。その時は、人が集まってたからまだしも、今は、わたし一人ぼっちだ。

どうしよう~

わたしはむいしきに、子ねこを二ひきだいて、家の方にむかっていた。

家のベンチに着くと、「ただいまー。」と言ってから、大声で、「お母さんちょっと来てー」とさけんだ。

あっお母さんが来てくれた。子猫たちに気付いて、しんこくな顔...。

「やっばりだめ?」

「うーん。仕方ないわねえ。」と、言ってくれた。

翌日、学校から帰ってきたら、一ぴきがもうつめたくなっていた......。

ごめんね、ちゃんとせわができなくて...。その子ねこをずっとだきしめていた。

なみだが止まらない。

もう一ぴきの子ねこに言った。「おまえの見えない家族はいなくなっちゃったんだよ。」

その子ねこも、だんだん弱っていった。次の日の夜、そのねこも力つきはててしまった。

何も言えない...。

次の朝、もう一ぴきのねこのとなりにしずかにうめて、くようしてあげた。

それでもう、帰り道には川の中を見ないようにした。

 

豊岳澄明

ページの先頭へ