法話の窓

スポーツの秋~第3レース(2017/10)

 10月といえば...体育の日!? スポーツの秋の到来です。全国各地で運動会やスポーツ大会が開催されることでしょう。
 私が小学生の頃の運動会の思い出といえば、毎年のように雨で順延になることでした。その原因として噂されていたのが、元々、小学校の校舎や運動場があった場所が墓地だったため、「呪われている」というものでした(笑)。これはおそらく都市伝説に違いありませんが、6年間のうちの半分くらいは雨で順延になったことは確かです。
 私は幼い頃から、かけっこが得意なほうでした。お寺の住職になってからも度々、校区の運動会のリレーやムカデ競争に引っぱり出されますが、40歳を過ぎると思うように脚が前に出ません。

 ところで、夏休み中に小学生の坐禅会を行なった際、「ウサギとカメ」のお話をしました。昔話では、ウサギに歩みの遅さをバカにされたカメが山の麓までのかけっこを挑みます。スタートするや否や、一目散に駆けていったウサギですが、途中で余裕綽々と居眠りをしてしまい、マイペースで進むカメに勝利を奪われてしまいます。
 このお話の教訓は、過信して思い上がり、油断をすると物事を逃してしまう。また、能力が弱く歩みが遅くとも、脇道にそれず着実に真っすぐ進むことで、最終的に成果を得ることができるというものです。
 では、同じ条件で第2レースを行なうとします。今度はウサギとカメのどちらが勝つでしょう? おそらく同じ失敗を繰り返さない限り、ウサギが勝つのは明白です。しかし、そもそも不利なかけっこで、ハンデもなしに勝負を挑むカメはあまりにも無謀です。
 そこで第3レースを行ないます。今度は途中までのコースは同じですが、池の中に浮かぶ小島がゴールです。果たしてウサギとカメのどちらが勝つでしょうか? ちなみにウサギは水が大の苦手です。
 さて、真っ先に池に辿り着いたのはウサギ。しかし、水が苦手なウサギは途方に暮れています。そこへ後から遅れてやってきたカメ。カメは困っているウサギを背に乗せると、スイスイと泳いで池を渡っていきます。そして、ウサギとカメが仲良く手をつないでゴールイン! お互いの違いや個性を認め合い、活かすことで、みんなが幸せに暮らせるようになるはずです。

 無門関の第一則に見られる「把手共行」という禅語は、手をとって共に行くと読みます。自他が協力し合うだけでなく、自己に内在する仏(慈悲心)と一つになるということでもあります。
 もしも、カメが自分だけ泳いで渡ったとしたら? もしも、ウサギがラストスパートとばかりに抜け駆けしたら? おそらく、どちらも後世の笑い者になってしまうでしょうね。

松岡宗鶴

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