法話の窓

羊頭を懸けて狗肉を売る

 

myoshin1501a.jpg 明けましておめでとうございます。
 2015年は、乙未(きのとひつじ)の年に当たり、ひつじ年のもつ「安泰」に、乙の「未来の成長・発展」という意味が重なった、縁起のいい年回りだそうです。
 また、未は「祥」という字の古体ともいわれますから、素直に「めでたい、さいわいな年」と受けとめて、是非とも、そのような年であるように祈りたいものです。
 さて、表題の語は、『無門関(むもんかん)』という禅の書物の中に出てくる語でありますが、年頭にあたりこの語から、私たちの「生き方」について反省し、「人間のあるべき姿」を学びたいと思います。
 羊の頭を看板に出しながら、実際には狗(いぬ)の肉を売ることから、見かけは立派だが実質がこれに伴わないことを意味します。
 世の中には、いわゆる「言行不一致」で、表面と腹の内がまるで反対の「似非人間」、「まやかし人間」がいるようです。
 昨年NHKのドラマで話題になった秀吉の知恵袋といわれた、黒田如水(官兵衛孝高)の詩に、

人多き 人の中にも人ぞなき人となれ人 人となせ人

 

 ある時、秀吉が如水に「この世の中で最も多いものは何か?」と問うと、如水は「殿下、それは人でございます」と答え、「それでは最も少ないものは何か?」と問うと、「それも人でございます」と答えたといいます。
 「人ある中に人なし」――世の中に人間は沢山いるが、真に役立つ立派な人間は少ないということでしょう。

 今年こそは「羊頭」という甘い看板をかかげて、「狗の肉」という偽物を売るごまかしを洞察できる力を養い、自らも正直に「本物人間」を目指して精進したいものです。

人間の姿、形をしているということと、人間であるということとは全く別のこと。せめて人間の役を果たしたい(掲示伝道より)

姫野晴道

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