法話の窓

お彼岸です ご先祖様に感謝しましょう

 

myoshin1409b.jpg 長崎のチャンポン麺の発祥の由来をご存知でしょうか。明治25年、陳平順(ちんへいじゅん)さんという19歳の若者が福建省から渡航してきました。最初はリヤカーで行商をしていたそうです。日清戦争の影響で中国人である彼に世間の風当たりは強く、大変苦労をされたそうですが、来日の7年後に「四海楼(しかいろう)」という中華料理屋兼旅館をオープンさせたのでした。この四海楼で生まれたのが長崎のチャンポン麺です。平順さんは中国から長崎に渡って来る貧しい留学生に、具材が豊富で栄養価の高い中国風のうどんを振舞ったのだそうです。「自分も苦労しながら周りの人に助けられて、ここまでこられたのだ。今度は私が貧しい若者を助け、恩返しをする番だ」。平順さんは留学生の若者を見ると決まって「吃飯了嗎(シャンポンラマ)」(日本語で「ご飯は食べたか」)と聞いたそうです。この言葉がいつしか平順さんの作る中国風うどんの名前になったのだそうです。
 お彼岸は今ある自分のいのちに対し、先祖に感謝する大切な行事です。お寺や先祖のお墓にお参りし、感謝の気持ちで手を合わせましょう。それは、自分自身の生き方を大切にしていることにもなるのです。なぜなら、ご自身の命は先祖から脈々と続いてきた命に他ならないのですから。
 先日、ある年配女性がお寺に来られました。お参りご苦労様ですねと話しかけると、「私も80歳までは頑張ってお寺に来ようと思います」と言われるのです。私は「じゃあ元気なうちに息子さんやお嫁さんに、仏様のことを引き継いでおいて頂いたら安心ですよ」とお話しすると、びっくりされたお顔で、「とんでもない、息子も嫁も仕事が忙しくて、お参りに来られませんよ」と言われるのです。ご自分も前の世代から、仏様に手を合わせる心を、引き継いできたのですから、その恩を次の世代に返していかなければならないと思うのです。平順さんが今あるのは頂いた恩のお蔭。今度は自分が恩を返す番であると、貧しい留学生にチャンポン麺を振舞ったように。
 今年のお彼岸は、家族そろってお参りに行きましょう。それがご先祖様への恩返しです。
 

青井直信

ページの先頭へ