法話の窓

煩悩無尽誓願断

 赤々と燃える囲炉裏にひらひらと舞い落ちる一片の雪。燃え盛る炎の前に、雪は為すすべもありません。次から次へと舞い落ちる雪を煩悩に喩えるならば、燃え盛る炎は煩悩を焼き払うこころの炎と考えることができます。

 それにしても、煩わしいことのなんと多いことか!私事ですが、スマホやゲームに気を取られ勉強に集中しない子供たちにため息の連続。そういう私はどうだろうか。考え事をしながらお勤めをするからお経を間違える。今ここが大切と説きながら、心ここにあらず。やはり親子だなと日々反省です。

 『四弘誓願文』に煩悩無尽誓願断とあります。煩悩は尽きることはないけれど、それでも断つことを誓います。たしかに煩悩は次から次へとわいてくるものです。その煩悩を消し去ることなんて到底無理と諦めたくなりますが、そこをなんとかこらえましょう。誓って願い続けていこうというのが煩悩無尽誓願断です。真冬に雪が舞い落ち、梅の花が春の訪れを告げるように、煩悩がわいてくるのも自然なことです。言い訳するわけではありませんが、煩悩がなければ生きていけないものです。真冬の雪も燃え盛る焚火の前では跡形もありません。こころの炎を燃やし続ける限り煩悩もしかりです。
 煩悩は尽きることがない。ならば煩悩を消し去ろうと考えるところですが、見方を少し変えて、こころの炎を燃やすことに眼目を置き、今なすべきことに専念、集中していきたいものです。そこには自ずと雑念からはなれ、今ここに生きる自身を見ることができることでしょう。

 受験シーズンです。受験生にとってはまさにいまが正念場です。「落ちたらどうしよう」と悩む子供を「悩む前に、やることがあるでしょう」と励ましたいと思います。そして、本番さながらの気持ちで残された時間を精一杯努めてほしいと思います。煩悩無尽誓願断。

 

小林秀嶽

 

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