法話の窓

朝ドラを見ながら

 朝ドラを見ながらの朝食、私にとってのルーティーンです。コロナ禍にあってもそれは変わりません。現在放映中の朝ドラは「おかえりモネ」。気になったのはBUMP OF CHICKENが歌う主題歌、「ヤジロベイみたいな正しさだ」のワンフレーズです。「ヤジロベイみたいな正しさ」ってどんな正しさなんでしょう。

 ヤジロベイは日本の伝統的な玩具の一つで、人の形をしていて釣合人形ともいうようです。胴の先が細くなっており、左右に伸びた手の先についている重りでバランスをとるというもので、そういえば小さい頃、どんぐりと竹ひごで作って遊んでたことを思い出します。胴体となるどんぐりに20センチくらいの竹ひごを斜め下方向になるよう左右に取り付け、さらに重りとなるどんぐりを取り付けます。竹ひごの長さ、角度、重さがポイントで、上手くいくとバランス良く釣り合います。
 そんな「ヤジロベイの正しさ」ということになると、バランスがとれている状態が正しさになるのでしょうか。
 ドラマの主人公は辛い過去を乗り越え、未来を予想する気象予報士を目指します。過去という重りと未来という重りのバランスを取ろうと、今を一所懸命に生きて行く姿は、バランスがとれている「ヤジロベイみたいな正しさ」といえるのかもしれません。

 我が宗門では坐禅をします。坐禅は自分自身を「調える」作業です。坐禅の基本は「調身(ちょうしん)・調息(ちょうそく)・調心(ちょうしん)」といわれるように身体と呼吸と心のバランスが大切です。
 調身は正しい姿勢。背筋を伸ばし、大地に根を張り天にそびえ立つ山になりきってドッシリ坐る。調息は規則正しい呼吸。吐く息を大切にし、長い呼吸をすることによって調えていきます。調心は「調身・調息」に従ってついてきます。体と呼吸という重りをもって心のバランスを目指す坐禅は「ヤジロベイみたいな正しさ」の実践行と言えるのかもしれません。

 なぜヤジロベイはバランスが良いのか。さらに「ヤジロベイみたいな正しさ」を考えてみました。
 そもそもヤジロベイがバランス良く釣り合うのは、一直線上に支点と重心がその順に並んでいる状態です。支点の真下に重心があるわけです。子供の時に作ったヤジロベイでいうなら、胴体となるどんぐりが支点、左右に取り付けた重りとなるドングリの真ん中あたりの見えないところに重心があります。二つの重りの一番重さのかかる点です。一直線上に並ぶということは自分自身ということではないでしょうか。
 朝ドラの主人公でいうならば、その主人公の過去、主人公の未来、主人公の今ということを強調しているのではないでしょうか。他人の過去や他人の未来じゃなく、自分自身の過去・未来なのです。
 坐禅という「調える」作業も、自分自身の「調身・調息・調心」であることを意識することが大切なのではないでしょうか。
 毎朝のルーティーンの中でそんなことを妄想しています。
 

 

和田 牧生

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