法話の窓

お彼岸のこころ

 3月にはお彼岸があります。お彼岸には、皆さまがお墓参りやお寺参りをなさり、ご先祖様の供養をつとめられ、お経を読まれ、お釈迦さまの教えに触れられることも多いと存じます。仏教では「到彼岸(パーラミター)」といって、迷いの此岸から悟りの彼岸に至ること、と教えてあります。お釈迦さまの教えを学び実践していくことで、私たちは迷い苦しみの多い心の世界から、真実の安らぎの心の世界へ到ることができるのです。
 お彼岸の期間1週間だけでなく、毎日の生活の中でお釈迦さまの教えを心にいただき、少しでも実践していくことが大切なのです。
 臨済宗妙心寺派では、そうした実践の道標として「生活信条」三ヶ条が示してあり、その一つに「生かされている自分を感謝し報恩の行を積みましょう」とあります。私たちは一人では生きていけません。多くの支えによって生かされて生きているのです。このことをしっかりと自覚して、感謝の心を忘れず、日々報恩の行を積んでまいりましょう、と示してあります。
 いただいている多くのご恩に報いるということは、難しいことですが、まずは身近な小さい事で良いと思います。何か人様のお役に立てることがあれば、と心掛けていく日々の暮らしが、報恩の行を積んでいくことにつながると信じています。
 仏教詩人坂村真民先生の詩「小さな教え」をご紹介します。

 

見知らぬ人でもいい 雨に濡れていたら
走っていって 傘に入れておやり
バスから降りるときは 疲れた車掌さんに
ありがとうと言っておやり
道ですれちがう おばあさんたちには
幸せを祈っておやり
目の見えない人が歩いていたら おっ母さんになったつもりで 手をひいておやり
ねがえりもできず ねている人があったら
こおろぎのように そっと片隅で 愛のうたをうたっておやり
小さいことでいいのです
あなたのむねのともしびを
相手の人にうつしておやり

 

 彼岸のこころという灯火が多くの人の心に灯っていくことを願っています。

志佐了拙

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