法話の窓

変わりつづける世の中

 今年1月、自坊の総会で、ある檀家さんから「和尚さん、本堂の洋式トイレの数を増やしてくれませんか」という声が出ました。よく話を聞いてみると、洋式トイレは行列ができているにもかかわらず、和式トイレを使う人が1人もいないというのです。
 25年前の本堂改修工事の時には、「洋式トイレはあまり使わないだろうから1つだけでいいだろう」という考えのもとに和式3、洋式1という配分で設置したのですが、完全に裏目に出てしまい、ここ数年誰も和式トイレを使う人がいなくなっていたのです。
 これは、私にとって時代の変化を感じさせる出来事でした。今回は、変化と整理整頓についての例え話を踏まえながら、幸福度の高い生活に欠かせない習慣についてご紹介しようと思います。

 変化を語る上で有名な「ゆでガエル」という話があります。2匹のカエルを用意して、一方は熱湯に入れ、もう一方は水に入れてゆっくり温めていく。すると、熱湯に入れたカエルは「あっちっち」といって跳び出して生き延びるけれど、ゆっくり温度を上げた方は、いつの間にか茹で上がって死んでしまうというものです。
 「19世紀頃、カエルを熱湯に入れる実験が行なわれた」とインターネットに掲載されていました。実際にカエルを熱湯に入れると、跳び出す前に死んでしまい、水をゆっくり温めると、ある程度の温度になると逃げだしたそうです。
 しかしながら、この「ゆでガエル」は作り話であるにもかかわらず、「ゆでガエルの法則」という名前までついて広く浸透しているのは何故かというと、誰にも思い当たる事があるからだと思います。つまり、急激な変化には即座に対応しようとするものの、ゆっくりとした変化には、段々それに慣れてしまい対応するタイミングを逃しやすいということです。

 また、あるテレビ番組で「エントロピー増大の法則というのがあります。形あるものは必ず壊れるという宇宙の大原則です。すべてのものは乱雑になろうとする。放っておいたら机の上が乱雑になる。乱雑になった机の上が自然に整理整頓された状態にはならないのです」という内容の放送がありました。
 現状を維持しようとするだけでは自然に、言葉は乱れ、服装は乱れ、心が乱れるということを表わしています。取り返しのつかないほど乱雑にならないよう、どのようなことにも整理整頓を心掛け、誠実にこなしていく事が大切だと思います。

 時代の変化を感じる昨今ですが、まわりの変化に素早く対応することでタイミングを逃さず、日々の整理整頓を忘れず、誠実に物事に向き合うことができる人間がいつの世にも求められる人材といえるのかもしれません。
 心の整理整頓をする手段として、日々努力するあなたを支える精神性を養うために、少なくとも一日一回、仏壇に手を合わせ、ご先祖様に感謝の合掌をし、心を調える習慣を親から子へ、子から孫へと、受け継いでもらいたいと思います。家に仏壇のない方は、一日一回、姿勢、呼吸を調える習慣を身につけ、感謝の心を育んでいきましょう。それを続けることが幸福度の高い生活へとつながっていくのです。
 

香泉 芳宗

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