法話の窓
[ 2018年02月 今月の法話 ]

雪に耐えて梅花麗し

 201802_kimura.jpg厳しい寒さが続きますが、2月も半ばになると、境内の梅が開花します。梅の花は厳しい寒さの後の春の訪れを感じさせてくれます。
 この梅に因んだ言葉に「雪に耐えて梅花麗し」があります。これは、地元野球チーム、広島カープで活躍した黒田博樹投手が座右の銘とした、西郷隆盛の言葉です。
 西郷隆盛は、江戸幕末、薩摩藩の下級武士で、藩主島津斉彬公の目にとまり登用されますが、斉彬公の急死で失脚し、奄美大島に流されます。その後、復職し、薩長同盟の成立や江戸無血開城など大きな成果をあげ、明治政府では重要な役職に任命されました。そんな西郷隆盛がイギリス留学する甥へ書いた手紙の中の言葉が「雪に耐えて梅花麗し」です。
 厳しい雪の寒さに耐えてこそ、梅の花は美しく咲く。人間も、多くの困難を経験してこそ、大きなことを成し遂げられる。これは甥の成長を願う激励といえましょう。
 黒田投手は高校の授業でこの言葉を知り、感銘を受けてそれ以来、座右の銘としました。実は黒田投手は高校の3年間、控え投手だったために公式戦で一球も投げられずにいました。しかし大学進学後、トレーニングの成果が出始め、卒業後はカープに入団しエースとして活躍します。その後、アメリカのメジャーリーグでも活躍し、再びカープに復帰すると、現役最後の2016年、日米通算200勝を達成。カープ25年ぶりのリーグ優勝に貢献し有終の美を飾りました。

 偉人の言葉には、時代を越えて、多くの人を励ます力があります。 
 私は、右も左も分からず入った修行道場で3年間お世話になりました。その後、自坊に戻り副住職となりましたが、そこからはまた、一からのスタートでした。副住職として檀家さんとのお付き合いが始まり、法事や通夜での法話も手探りで始めます。しかし、心遣いが足りなかったと反省したり、なかなか思うようにいかず、落ち込むことがあります。そんな時、禅の先人方の書物を読み、その言葉に力をいただくことがあるのです。その中にも登場した西郷隆盛は、禅の修行をした禅の達人でもありました。難しいと諦めてしまえば成長できない、困難な時も精一杯頑張っていく、その積み重ねが将来の自分として表われてくると信じ、精進精進と思う毎日です。

 仏教詩人といわれた坂村真民(さかむら しんみん)さんの詩に「生きることは」という詩があります。

  生きることは 自分の花を咲かせること
  風雪に耐え 寒暑に耐え 
  だれのものでもない 自分の花を咲かせよう

 人生で壁にぶち当たっても、目をそらさず精一杯やっていくと、得るものが必ずあります。そのすべてが私たちの肥やしとなり、いつか花を咲かせる時がくるでしょう。皆さまの周りにも素晴らしい花を咲かせている方がいらっしゃるのではないですか。私たち自身も美しい花を咲かせたいものですね。

木村宗凰