
■ご本山妙心寺 開山無相大師の生涯と時代
京都洛西の花園臨済宗妙心寺のご開山無相大師関山慧玄禅師のご生涯は、鎌倉時代の未曾有の国難元冦にはじまり(1277御誕生)ご修行時代は鎌倉幕府の栄枯盛衰に遭遇し(1333)花園法皇さまの発願により花園の離宮が禅の寺 正法山妙心寺と開創され(1337)ご開山さまが入寺(1337)されたのが建武の新政が破れ、南北朝対立の年でありました。そして入寺以来清貧枯淡の生活をもって修行僧を説得され独自の禅風を挙揚され84才の高齢で遷化(逝去)された年(1360)は、まさに南北朝動乱の真只中でした。
■開山さまの禅風
国難の時代に生を受けて、人間不信、対立闘争の世にあって、大応国師について修行、法を嗣がれた大燈国師と伝承された正しい禅の教え(応燈関の禅)をもって時代に左右されることなく人間の真実なる道を体得し、伝導されたのが開山無相大師 関山慧玄禅師であります。
「汝等請う、其の本を務めよ」
開山さまがご遷化(逝去)にさいして修行僧に遺された誡のお言葉「汝等請う、其の本を務めよ」は佛教の根本 禅の教えの命脈(いのち)を表現した言葉であります。650年の妙心寺禅教団の教えの要(かなめ)であります。
汝等請う、其の本を務めよとはすべての人々に対して開山さまは、人間一人ひとりに立派な尊い佛性(真実な自己)・佛心(智慧と慈悲心)が具っている。どうか自己の尊い佛性、佛心に目覚めていただきたい。人間のすばらしさはこの佛性、佛心に目覚めることである。
開山さまは、戦乱の世にありながら深い人間愛をもって修行僧をはじめ多くの人々に対して、如何なる時代、世相であってもお互い人間同士が深い愛情を持ち、同じ佛性、佛心を具有している尊い人格であることを深く信ずることが、安らかに生き、平和な社会を築く最も大切な道である。
■あなたも わたしも同じいのち
一切衆生は処々世々の父母兄弟である。すべての人々は佛性、佛心の血を分けた親子、兄弟であり、他人はいない。「あなたも、わたしも同じいのち」この人類平等の同胞の心を開山さまは教えられたのであります。
日本人の好きな食べ物の中に串団子があります。赤色、白色、緑色と色々な団子が一本の串によって並んでさされております。人類すべての人々は性別、民族、国家、境遇...の違いはありますが尊い佛性、佛心の一本の串によって連なっている。自己を信じ、他者を信ずる。すべての人々が自他共に具有している佛性、佛心に掌を合わせて、心の絆を結ぶことが安らかな人間生活を築く最も大切なことであることを。
■結びの言葉
豊かな物にめぐまれ、あり餘る情報と価値の多様な時代にあって、何を選択し、人生の真の価値、幸福を見い出したらいいのであろうか。この現代人の悩みに対して、開山さまは、真実な自己の発見、他者への尊重、自他共に幸福を頒かち合う。あなたも、わたしも同じいのちと共生の平和社会を築くことが人類の目標とする生きる道であることを教えられたのであります。
尾関 義昭