
人間は一人ひとり素晴らしい仏性、仏心を具有している。時の流れを正しく見て、時流に左右されることなく、人間の真の価値を見いだせ。
【後 編】無相大師の妙心寺入寺、修行者の指導、ご遷化と残された教え
【どう活かす わたしのいのち】
来る平成21年は臨済宗ご本山妙心寺のご開山関山無相大師の650年の御遠諱の正当の年であります。本年平成18年より、前もっての予修法要が厳修されます。
◎開山さまの妙心寺入寺と修行者の指導
伊深の里の草庵に花園法皇さまの妙心寺入寺の勅命の使者が訪れました。開山さまは再三固辞されましたが先師大燈国師の遺命と聞き取り、なつかしのお百姓さま、牛たちと別れを惜しみ伊深の里を去られました。
上洛されたご開山さまは花園の離宮で花園法皇さまに謁して妙心寺に入寺されました。ご本山妙心寺が名実ともに開創されたのであります。
◎応燈関の禅の伝統
鎌倉の最初の師大応国師、法を嗣がれた洛西大徳寺の大燈国師、ご開山関山慧玄禅師の応燈関の禅の伝統をここに妙心寺は法の源としたのであります。
入寺されたご開山さまは先ず先師大燈国師の語録の編集と共に道を求めて参禅する修行者に渾身の誠意と情熱をもって指導されました。当時の妙心寺は戦乱の時代であり、花園法皇さまの仮住居を禅院にした極めて質素で小規模なものでありましたが、開山さまは華を去り、実を取り、質素で枯淡にして、形にこだわらない、自由な真の人間づくりを主眼とした禅道場の伝統をつくられたのであります。
◎ご開山さまの嗣法者とご遷化
ご開山さまには晩年、すばらしい求道者ではあり、嗣法者が出来ました。二祖授翁宗弼禅師であります。二祖授翁宗弼禅師は開山さまから提示された「本有円成仏、なんとしてか迷倒の衆生となる」。人間は本来尊い人格、仏性、仏心を具有している「どうして迷える衆生になるのか」の公案に辛参苦修の5年、ついに大悟され、法を嗣ぎ妙心寺二祖となられました。開山さまの妙心寺伝統の心が授翁宗弼禅師に伝承されたのであります。
開山さまは84才の高齢を迎えられました。雪の降る12月12日、旅支度をされ、風水泉のほとりに立ちて二祖授翁宗弼禅師に最後の教え、御遺誡をされて立亡(立ったまま遷化されること)されました。
ご遺体は、弟子達によって妙心寺の東北の位置に埋葬されました。現在の開山堂微笑庵の地であります。
毎年12月12日の開山さまの御命日を、妙心寺は開山忌といたしております。
◎開山さまの御遺誡、残された教え
ご開山さまは最後の教え御遺誡に「汝等請う、其の本を務めよ。誤って葉を摘み、枝を尋ぬること莫(なく)んば好し」と教えられました。其の本とは人間性の真実仏性、仏心であり、努めとは、探求すること、目覚めることであります。人の世の枝葉末節に左右されることなく、惑わされることなく、真実人間の道を求めよと。
◎むすびのことば
ご開山さまは戦乱、殺戮、対立、人間不信の修羅場の時代にあって、時流に流されることなく、深い人間愛をもって、すべての人々は尊い仏性、仏心を具有している。それなのに、どうして闘争の修羅の衆生となるのかと誡められ、其の本を務めよ、真実な自己の発見、智慧と慈悲心の仏心。信じ合う心が人間の幸福の原点であり、戦乱をおさめ、平和な社会国家を築く心であることを教示されたのであります。
豊かなめぐまれた消費生活、有り余る情報、価値の多様な時代、ともすれば時流に流されがちな現代人に対して、真の人間の価値とは何か、自己の真実(仏性、仏心)の発見こそ人間の求むべきもの、あるべき姿であることを妙心寺開山無相大師は教えられたのであります。
尾関 義昭