今月の法話

033 無心

 むかしむかし、ファンシイダンスという、マンガがあったげな。
 面白おかしく、禅宗の修行のことが描いてあったげな。あんまりリアルで面白いので、映画にもなって大ヒットしたんだと。

 その頃、修行道場に居た私は、休みの日にこの映画を観て大笑いをしておりました。
 そんなの知らないという方は、ビデオ屋さんに一本くらい置いてあると思いますので、是非一度ごらん下さい。抱腹絶倒間違いなし!!こんなおかしな世界が本当にあるのかしらと思うでしょう。
 実際なんで厳しい修行が笑えるのかと、不思議に思う方もありましょうが、さにあらず、実はもっとおかしいのです。

 私の後輩に、大変真面目そうなんだけれども、ちょっとズレている人がおりました。
 ある時大庭の掃除のために、皆箒(ほうき)を持って外へ飛び出して行ったのですが、すぐに彼が帰ってきて、直立不動の姿勢で言いました。
「お願いいたします!!」
「なんだ。」
「私の地下足袋に、百足(むかで)が入っておりました!!」
「それでどうした?」
「二回、噛まれました!!」
「なんで二回も?」
「足を入れた時、何か居るなと思ったんですが、急いでいましたのでそのまま履いて走ったら、百足も苦しかったとみえて、二回...。」
 この後彼は医者に行ったのですが、皆それを聞いて大笑いしました。
 彼にすれば、大庭に誰よりも先に行って掃除をすることが、一番大切な事だったのです。

 ご開山様の逸話にもあります。
 突然の雨で、屋内に雨漏りがしたため、開山和尚大声で小僧を呼びました。一人の小僧がザルを持って走ってきたので、大いに褒めたというのです。後から桶を持ってきた小僧は叱られたというのです。

 禅宗って変ですねえ。常識が無いんですかねえ。大真面目にやればやる程面白おかしく、はた目には変に映るんですから。
 しかし、「無心」という一点において、活き活きとして、香(かんば)しいとは思いませんか。

 誰かのために尽くすとき、毛の先ほども自分の利益を考えたならば、損得の世界から一歩も出られず、常識のものさししかありません。皆様方のものさしは、どうでしょうか。

柳楽 一学